金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
放課後、有紗に誘われてバスケ部の練習を見に体育館にやってきた。
中に入ると、ボールの弾む音やバスケットシューズが床を蹴る音が響きわたっていて、運動部を見慣れていない私は圧倒されてしまう。
曽川先輩は……?
キョロキョロ辺りを見回していると、ものすごい早さでオレンジ色が目の前を横切った。
それを目で追うと、かなりゴールから離れた場所できゅ、と床を鳴らして垂直に飛び、きれいなフォームでシュートを打つ……
昨日より何倍も格好いい、曽川先輩がそこに居た。
ゴールに吸い込まれたボールが床に落ち、それを拾った曽川先輩がこちらを振り返る。
「あ、あの……」
どうしよう、練習の邪魔だよね……
そう、思ったけど……
長めの前髪を派手な黄色のカチューシャで上げ、額に汗を浮かべるその姿に見とれてしまって……
足が、動かなかった。