金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「終電、間に合うくらいまでなら……」
「マジ?良かった~!少しでも長い時間一緒に居たいからさ」
あ……それ、私も……
今だって、先輩がバスケしてる姿少し見たら帰ろうと思ってたのに……
もっともっと話をしていたいって、欲張りになってる。
「――千秋、こっち来て?」
くいっと手首を引かれて、さっきより先輩の近くに立たされた。
高いところにある彼の顔をおずおずと見上げると、悪戯っぽい瞳が私を見つめていた。
「目……閉じて?」
私は戸惑いつつ、でも自分もそうされることを望んでいたから、ゆっくり目を閉じた。
風の音に混じって、体育館の賑やかな音が遠くに聞こえる。
先輩が、掴んだままの私の手首を、また少し、引っ張った。