金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
2
コチョウラン
――――土曜日、私は待ち合わせ場所の駅前でそわそわしていた。
この格好で大丈夫かな……
持っているどの服を着ても、曽川先輩の隣を歩くにはふさわしくない気がして、家を出る前に何度着替えたかわからない。
それでもようやく選んだピンクのシフォンワンピースは、裾に黒のレースが刺繍してあってこの春のお気に入りだ。
背の高い曽川先輩となんとか釣り合いたくて、足元のパンプスは今日みたいに街を歩きまわる日には向かない、7センチヒール。
履き慣れない靴だから、つま先が少しだけ痛い。
「先輩、まだかな……」
携帯で時間を確認すると、約束の時間を5分過ぎていた。
改札の方をじっと見ても、それらしき人は見あたらない。
メールしてみようかな……
でも……5分遅れたくらいで連絡するなんて、うざい……?