金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


「……やっぱ、無理……っ」



試着室で、私は慌てていた。


買う訳じゃないからそんなに引っ張ったらまずいんだろうけど、この裾……短かすぎるよ。


油断したらすぐにパンツが見えてしまいそうだし、大きく開いた胸元は、少し腕を動かしただけで肩まで出てしまう。

たまたま今日は下着が黒だからブラの肩ひもが見えても変じゃないけど、さすがに曽川先輩には恥ずかしくて見せられない。



「――千秋、着れた?」


「着れましたけど、もう脱ぎます……!!」


「え〜?俺にも見せてよ。着たならここ開けるよ?」



ダ……ダメ―――っ!!



私の心の叫びは届かず、無情にも試着室の扉は開かれる。



「……似合うじゃん」


「……嘘……こんなの私には全然……」


「俺が似合うっつったら似合うの。これいくら?」



いつの間にか彼の隣には店員のお姉さんが居て、彼女が3900円です、と答えた。


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