金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「じゃあ買います。ちなみにこのまま着ていきたいんですけど」


「かしこまりました」



え……?

どういうこと……?

このまま着ていくって……誰が?



「千秋、次は五階の美容室行くからな」


「先輩……これって」



曽川先輩に質問しようとすると、タイミング悪く店員さんが私に話しかけた。



「値札を取らせて頂きたいので、一度脱いでもらってもよろしいですか?」


「あ……はい」



……何が何だかわからない。


私は今からこれを着て外を歩くの?


それに美容室って……



「千秋、まだ脱げねーの?」


「あ、あと少し……待って下さい!」



今朝あんなにドキドキしながら選んだ私のワンピースは、気に入ってもらえなかったってことなのかな……

しかも……デートの途中で着替えさせたくなるほど。


もしそうだとしたら……かなり落ち込む。


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