金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
『髪はゴージャスな感じにコテで巻いて、メイクは暗い場所で映えるよう派手目に』
美容室で先輩がそんな注文をし、私はさらに理解不能な変身を遂げた。
鏡に映った自分が自分じゃないみたいで、なんだか落ち着かない。
でも、ソファで雑誌を読みながら待っていた先輩の元へ行くと、彼は満足そうに頷いて呟く。
「……これで勝ったも同然だな」
「勝った……?」
「んーん、こっちのこと」
そう言うと先輩はさっさと立ち上がり、会計のため美容師さんに声をかけた。
ここの料金すべても先輩持ちで、ランチと服も合わせたら1万円近くのお金を使わせてしまっている。
美容室を出たところで、私は聞く。
「先輩、これからどこに……」
「こないだ新しくオープンしたクラブで、俺の友達に千秋を紹介したいんだ。
店に高校生だってばれると面倒だから千秋にはちょっと変身してもらった」