金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
やっと明らかになった変身の意味に胸をなで下ろした私は、ずっと抱いていた不安を先輩にもらした。
「私の服が気に入らないからじゃなかったんですね……」
「なんだ、そんなこと気にしてたの?千秋は何着てても可愛いよ」
先輩がそう言って、私の頭を軽く叩いた。
ドキン……と胸が鳴って。
やっぱり私は曽川先輩が好きなんだと、再確認する。
――――街はすっかり薄暗くなっていて、夜の香りが漂う。
すれ違うカップルたちは、暗闇に紛れて親密そうに肩を寄せあったり、時には道の真ん中でキスをしたり……
みんな、幸せそうに夜の始まりを楽しんでいた。
クラブなんて初めてだけど、先輩と一緒ならきっと大丈夫……
そう自分に言い聞かせながら、つながれた右手だけを頼りにして歩いた。
「ここの地下だから」
そう言って怪しげな階段を降りていく曽川先輩。
高いヒールで一日歩いた私の足はかなり悲鳴をあげていたけど、歯を食いしばって一段ずつゆっくり降りた。