金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
新と呼ばれた男の人がジロジロと無遠慮な視線をよこすので、私は思わず目をそらしてしまった。
だって、彼は耳にはもちろん鼻にも口にもまぶたにも、ピアスがいっぱいついていて、目付きもかなり悪い。
「……チッ」
その上私を見たまま舌打ちなんかするものだから、私はすっかり怯えて曽川先輩の腕につかまっていた。
「……賭けはお前の勝ちだ、響。こっちの女じゃ太刀打ちできねぇ」
「んじゃ早く金ちょーだい?俺今金欠なんだよね」
二人の会話が理解できなくてふと視線をずらすと、新と腕を組む女の人と目が合った。
控えめに会釈をすると、向こうは私を睨んでぷいと顔を背けてしまった。
……私、何かした?
「千秋ちゃん」
先輩が、私を呼んだ。
「あ、はい!」
あれ……?
今、千秋ちゃんって―――…
「千秋ちゃんのおかげで5万もゲットしちゃった!これ少ないけどお礼」
差し出されたのは、一枚のお札。
私は戸惑って、先輩を見つめる。