金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「――――許せません」
話を聞き終えた恩田は、怒りを滲ませて、自分の太ももを握りこぶしで殴った。
途中泣き出してしまった私はお母さんに肩を抱かれていた。
お母さんもきっと泣いているのだろう、顔は見えないけれど鼻をすする音が聞こえた。
「……その岡澤先生がまだ在職中のようなら、僕が中学まで行って今からでも謝罪するよう頼んできましょうか」
謝罪……
今まで謝られたいなんて一度も思わなかった。
でも、そうやって逃げてきたから今こんなに苦しいのかもしれない。
それが自分を解き放つために必要なステップなのだとしたら……
私は、逃げたくない。
「……お願いしてもいいですか?私、もう過去と決別して前を向きたいんです。謝罪してもらえたら、自分の中で何かが変わるかもしれない」
私が言うと、恩田は……ううん、恩田先生は力強く頷いてくれた。