金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「――それじゃ、なんとか岡澤先生と連絡を取ってみるから少しの間待ってくださいね」
玄関で、靴を履き終えた先生が言った。
「はい、ありがとうございます」
まだ、謝罪してもらえると決まったわけではない。
それでも、先生とお母さんに話を聞いてもらったことで気持ちの整理は少しだけついた。
私はきっともう、あの“儀式”はしなくて大丈夫だ。
「夜分に失礼しました。カモミールティーとても美味しかったです。では、おやすみなさい」
「あ……待ってください!」
私とお母さんに挨拶をして玄関の扉に手をかけた先生を、私は無意識に呼び止めていた。
先生には本当に感謝していて、何かお礼をしたいと思った。
私なんかで役に立てるかわからないし、自分に向いているとも思えないけど……
「私……スポ大の実行委員、やります」
先生は目を丸くして、それからすぐににっこり笑ってくれた。
「助かります。そしたら来週また学校で打合せしましょう」