金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
そんなことないよ、と言いつつ、そうだとしたらなぜだろうと考えた。
もう、あんなバカな男に騙されたくない、強くなりたいと思う気持ちがそうさせているような気がする。
それと……
私は、教室に入ってきたグレーのカーディガンを目で追う。
「おはようございます。ホームルームを始めましょうか」
恩田先生が味方だってわかったから。
信頼して大丈夫だと思えたから。
それが私に自信を持たせてくれたのかもしれない。
「先週連絡したスポーツ大会の実行委員のことですが……三枝さんがやってくれると申し出てくれました。皆さん、拍手〜」
……先生の、ばか。
恥ずかしいから拍手なんてさせないでよ。
好感を持ち始めたはずの先生をちょっぴり恨みながら、私は新しい一日をスタートさせたのだった。