金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「大丈夫です。それに先生だって忙しいでしょう?部活とか……」
聞いてから、思った。
そういえば恩田先生はなんの部活の顧問だったっけ……
「部活と言っても僕は副顧問だからね、バスケットも下手だし……」
――――バスケット。
「……どうしたの?」
急に黙りこくった私の顔を、先生がのぞき込む。
私は首を横に振って、笑顔をつくった。
「何でもありません。とにかく、明日は一人で大丈夫ですから」
「……わかった」
教室に戻ろうと踵を返すと、背中に声をかけられた。
「三枝さん」
「…………?」
「何か困ったことがあるなら、遠慮しないで言って?小さなことでも、悩んだままはよくない」
普通に考えれば優しいひとこと。
だけどまるで先生の方が悩んでいるような、頼りない声と表情だった。
「……どうして先生がそんな顔するんですか」