金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
先生と一緒に校内に戻り、職員室の前で別れようとした時だった。
「恩田先生に、お電話です」
中から顔を出した一人の先生の言葉に、私たちは顔を見合わせる。
…………岡澤だ。
「……私、近くにいてもいいですか?」
「うん、会う約束を取り付けたいからその方がいい」
私は先生に続いて職員室に入り、先生の机のかたわらに立った。
自分が直接岡澤と話すわけではないのに、緊張して手に汗が滲む。
「――――もしもしお電話変わりました、恩田です」
先生……頑張れ。
「ええ。話というのは僕が受け持っている三枝千秋さんという生徒のことで……」
岡澤は、私の名前を出されて少なからず動揺するはずだ。
恩田先生を相手にどんな反応を示すだろう……
「ええ、彼女は優秀だし頑張っていますよ。
ただ……中学三年のときにあなたから受けた理不尽な行為について、今でも深く傷ついています。そのことを彼女に直接謝罪してもらおうと思って今日はご連絡した次第です」