金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

職員室に居た他の先生方にも恩田先生の声が聞こえてしまったらしく、みんなが怪訝そうに私たちを見る。

肩をすくめながら先生を見つめていると、急にその表情が変わった。



「……なんですって?自分に落ち度はなかったとおっしゃるんですか!?」



声を荒げる先生を見て、私は思った。

やっぱり……アイツが素直に自分のしたことを認めて謝るなんて、無理なのかもしれない。

姑息な言い訳を使って、どこまででも逃げそうだ。



「彼女がどれほど傷ついたか解って……!もういい、電話じゃラチがあきませんね。今からお会いできます?」



先生はそう言って、私を見た。

予定は大丈夫か聞かれているのだとわかり、小さくうなずく。



「はい。30分程でそちらに行けると思います。本人も一緒です。はい……では」



本当は怒りに任せて受話器を置きたいのだろう、ゆっくりと受話器を戻す先生の手がかすかに震えていた。


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