金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「俺も気になってはいたんだよ、三枝。あんな風にお前を傷つけてしまったこと」


「……あんな風って、なんですか。具体的に言って下さい」



怒りで声を震わせながら、私は言った。

セクハラをしたと、恩田先生の前で認めさせたかった。

うわべだけで謝られても、全く意味がないから……



「具体的って、それは……今ここで言ってもいいのか?」


「言ってください。恩田先生はもうすべて知っていますから」



私を気遣うような振りをして逃げようったってそうはいかない。

早く、認めなさいよ……
私だって、ずっとあんたと向き合っていたくなんてない。


岡澤は、仕方がないという風にため息をつき、改めて私を見た。

口許には何故か私を憐れむような微笑を浮かべていて、背筋に嫌な汗が流れる。



「――悪かったよ。三枝の気持ちに応えてやれなかったこと」




……は?

何、言って……


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