【短編】異端の二人
が、しかし……

「ナナ、君なんだよ」


タカのその一言で、微かな望みは脆くも崩れ去ってしまった。


「待って。私には父がいたわ。天馬博士という、ロボット工学の世界的権威の学者が……」


ナナは弱々しい声で言い、すがるような目でタカを見たが、タカは静かに首を横に振った。


「そんな人は存在しないよ。“天馬博士”という名前はね、ある古典的なアニメに登場した人物で、主人公のアンドロイドを造った科学者の名前なんだ。僕はそれを拝借したのさ。

君の、僕と出会う前の全ての記憶は、どれも僕が創った作り話に過ぎないんだ。すまない」


ナナは、がっくりと肩を落とした。


「やっぱり、そうだったんだ……」

「やっぱり、って……?」


実のところナナは、かなり前から疑っていた。自分の過去は、本当に存在したのかと。本当に正しい記憶なのかと。

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