イベリスの花言葉。


「結局、2人はパートナーを選ばずあたしの努力は無駄に終わった。そしてどうしてなのだろう。こんなにも早く着いてしまうとは。ああ、大変だおなかが壊れてしまったようだ。誰か救急車を・・・。」
「三途の川を渡りたい?性的な意味で。」
「すぐ行きましょう!さっさと行きましょう!」
耳元で囁かれた言葉に顔が真っ赤になる。
触れるだけのキスなら挨拶でよくやったけど耳元で囁くとかダメなんです。あたしまだ処女なんで。


元気よく飛び出したあたしに襲い掛かってきたのは、幾つもフラッシュ。
向けられるのは、機械音を立てるカメラとフラッシュ。そして、人々の好奇の目。
足がふらつく。鼓動が早くなって、“あの時”の記憶が被って血の気が引いていく・・・。
後から降りてきた陸さんがあたしの顔を見て驚く。
厳しい顔になって、しゃがみこんだ。
支えを失ったあたしの体が倒れる前に、彼の両手があたしを抱えあげた。
お姫様抱っこだ。とか恥ずかしい。とか思っている余裕なんて今のあたしには無くて。
カメラから、人のまなざしから、逃れるように陸さんの胸元に縋り付いた。
会場まではカメラも入ってこられないらしく、中に入った陸さんは足早に化粧室前の廊下に向かった。
胸に手をつき、呼吸を整える。
心臓に落ち着くよう、言い聞かせながら座り込む。
水の入ったコップを差し出され、お礼を言う暇もなく飲み干した。
ようやっと呼吸が安定する。
のども渇いていたし、脱水症状になりかけていた。

「大丈夫か?」
心配してくれてことに感謝しつつ、頷く。
メディアは嫌いだ。だから嫌だったのに・・・。
注目されることも、カメラを向けられることも。
先ほどのカメラの量を思い出して眉間に自然と皺が寄る。同時に吐き気も催した。





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