イベリスの花言葉。
背中を叩く、心地良いリズムに目を閉じる。
落ち着いていく、先ほどよりずっと早く。
陸さんの肩に顔を埋めるようにして大きく息を吐いた。
「ごめんなさい。もう大丈夫です、ありがとうございました。」
彼の顔を見て笑顔を向ける。
多少の吐き気は残るものの結構な時間を使ってしまった。
今日は陸さんの付き添いで来ているのに、これ以上貴重な時間を無駄にするわけには行かない。
このパーティはビジネスだ。
立ち上がり、気合を入れると陸さんの手をとって会場の中に入った。
途中何度か気遣いの言葉を掛けてもらったが、あたしは大丈夫の一点張りを突き通した。
パーティでは先ほどの友人たちがつまらなそうに足っていたり、各界の大物たちが自慢話を披露していた。
どこの国でも、自分自慢は変わらないか。とため息を吐いた。
そこに綺麗な女性が駆け寄ってきた。
今回このパーティを主催した下岡グループの娘、下岡 杏梨さんだ。
「陸!」
「・・・杏。」
2人は、恋仲のような雰囲気を醸し出していた。
お邪魔かな、と思い気を利かせて離れることにした。
会場をぐるっと一周すると大物たちの自慢大会の内容しか聞こえてこない。
「Hello?」
久しぶりの英語に体が反応する。
すっかり慣れてしまっているが、あたしの母国語は英語だ。
「Hello.」
返事をして、暫く話をしているとこの男の人は日本人でイギリスに三年ほど留学経験があるらしい。
そこで、彼は爆弾を投下した。
四年前からイギリスで暮らしていたらしい彼はあたしのことを知ってか知らずかこの場にふさわしくないであろう、あの憎き事件のことを話題に上げた。