イベリスの花言葉。


「まだなんとも。でも体はすっかり元気なのよ?」
立ち上がり笑顔を見せる。
そのようだな。と笑う彼にそういえば。と話題を持ってくる。
「杏梨さんとはどうなってるの?」
「は?」
「え?だって恋仲なんでしょ?この間のパーティの時気を利かせたんだから。」
感謝してよね、の言葉は口付けによって遮られた。

「えっと?」
暫くちゅっちゅっという可愛らしい口付けを交わされていた。
ことを終えた後、あたしの口から漏れたのはそれだった。
「杏、彼氏いるから。俺、好きな奴違うし。」
怒ったような口調に頷く。
判ったといわなきゃ、殺されそうな目だった。




机の上には新聞が置かれている。
イギリスから取り寄せたもので、オジサンたちが捕まったという内容だった。
あたしの前に現れた男が全て、白状したらしい。
それを読んだとき、なんともいえない虚無感があたしの胸を突いた。
許せないけど、憎めないよ・・・。
あたしを引き取って育ててくれたことには変わりないもの。
たとえ好意の裏にどんな悪意のこもったものがあったとしても。
それに、あたしが聞いていた以上にオジサンたち一家は苦しかったみたい。
過去の犯罪で盗んだ金も底を尽きそうだったらしいと記事が伝えている。

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