イベリスの花言葉。
病室に入ってきた男の人は見慣れない顔。
スーツ姿で手には真っ赤な花束。挨拶もせず、扉をしっかりと閉めると男はポケットからあるものを出した。
目は憎しみに染められている。
太陽の光で男の持つジャックナイフの刃がキラリと光った。
あたしを憎むこの男にあたしは何も言ってはやれない。
「お前がリオン・シルビスか?」
低くて、余裕のない、それでいて掠れた声だった。
ナイフの刃があたしに向けられる。
あたしは動揺せず、一つ頷いた。
目の前の男が誰だか判らないまま、あたしの脇腹をナイフが抉った。
チリッとした痛みと、冷え。
シーツが深紅に染まる。
男が持ってきた、花束と同じ位紅くて、暖かい。
男は慌てて出ていった。
入れ替わるように入ってきた看護師が悲鳴をあげる。
誰かが駆け付けてくる音が聞こえる…。
あ…もうダメ。
体が、落ちるー…。
クラクラする。視界が揺れて気持ち悪い。
それに寒くて、ジンジン痛む…。