イベリスの花言葉。
落ちる、落ちる、どこまでも。
気がつくと空の上だった。
雲に腰掛けるようにして目下の街並みを見下ろす。
夜だった。頭上には大きな月がきらきらしていた。
人工の光なんて比じゃないくらい、綺麗だった。
思わず感嘆のため息が零れる。
そして、気がつく。あたし、死んだの?
鳥があたしの体をすり抜けている。誰にも気がつかれないの?
雲から飛び出すと落ちていく感じがした。
地面に足がつく。
裸足なのに冷たさを感じないのはやっぱり死んでいるから?
それともこれは夢なの?だとしたらリアルすぎる。
東京スカイツリーが聳えたつ、押上。
あたしはどこに向かうべき?
答えは判っている。
あたしの居る病院だ。
電車に乗り、何かに導かれるようにしてあたしの家まで戻ってきた。
扉は開けず、すり抜ける。
中には何の変化は無かった。
だけど。
「手紙?」
机の上に、未開封の白い便箋が放られていた。
触れられるのか、と手を伸ばす。
指先が軽く触れた途端それは花火のように弾けて空間に文字を焼き付けて文が現れた。
内容は天国からの手紙じゃなかった。
オジサンたちからの地獄の手紙。