イベリスの花言葉。


笑っていた。
大丈夫、そう言いたげに彼は笑っていた。

怒りが収まる、ような気がした。
一つ、大きく深呼吸をしてまた口を開く。
落ち着かなくちゃ。
「13歳だったあたしから、両親を奪ったの。生まれてくるはずだった弟だって、奪ったの。未来も、夢も、生きることも失った3人。・・・あたしは、外が怖くなった。」
友人と見たあの日の家の中。
暖かかったはずの家は、真っ赤に染まっていた。
生けられていた花や壁に掛けられていた絵や、お気に入りだったカーペットにも。
余すところ無く、両親の血で覆われていた。
見覚えのあるものを変える、見覚えの無い真紅。
今朝まで笑っていた両親が倒れていて・・・鼻を掠める、両親の血臭。
胸に何か、つっかえた様に息がし辛くなって目の前が霞んで
ふらふらとお互いを支えながら、あたしと友人は地獄から這い出た。
転げるように中から出てきたあたしたちを見て、街の人たちは驚愕した。

気付かない内に体中に付着していた、血。
顔や手や体に夥しいほどの血が付いていた。
あたしと友人は震える声で、集まってきた人々に懇願したんだ。


助けて、って。




< 43 / 51 >

この作品をシェア

pagetop