イベリスの花言葉。


裕也さんは、泣いていた。
静かに、涙を流していた。
隣に座る奥さんも、何故か泣いていた。
彼女はあたしの話だけで、全て悟ってしまったらしい。
彼自身は、泣いていることに驚いていたようだ。



彼は謝ってきた。
奥さんにも謝っていた。
綺麗な、彼の奥さんは泣きながら、馬鹿。を連呼していた。
それでも、入ってきた警察に連れて行かれそうになると慌ててその、細くなっていた手を握って微笑んだ。


「私は、どんな裕也くんも好きだから。」

「まっているから。きっと。」

「あなたが、他の誰を愛していても。」

「私は、あなたを愛しているから。」

「だから、いつか・・・帰って来て。後回しでもいい。傍に、帰って来て。」

「この子のためにも・・・。」

奥さんはまだ平らのおなかに手を添えて微笑んだ。
彼は、驚いたようだったけど今度はにこやかに笑っていた。



「行って来る。」
それだけ、彼は彼女につぶやいて。




< 47 / 51 >

この作品をシェア

pagetop