イベリスの花言葉。
いいネタだからと無断で盗撮していい訳がない。
いつ撮られたかも判らない映像をニュースで流され、唖然とした記憶はまだ新しい。
あたしが人間不信に陥り、引き隠りになった理由の一つだ。
「なぁリオン。もう一年が過ぎた。そろそろ踏み出してみないか?」
壁にかけられたカレンダーは一年も前から時が進んでいない。
「両親が殺されたのは、二年前だよ。」
あたしの時間は二年前から動いていないもの。
「君が外に出なくなって、一年が経ったんだ。」
訂正したハズのあたしが訂正された。
自分の中に閉じ籠って一年。
分厚いカーテンを引き、外との接触を拒んで。
心理カウンセラーや精神科医が来たけれど、あたしはあくまで普通を装った。
異常ないと言われたオジサンたちはどうしたんだろうか。
あたしは立ち上がり、ひさしぶりの食事をとった。
意地を張っていたせいで忘れていたが、相当腹が減っていたようだった。
「ねぇ、オジサン。」
空になったお皿をまとめながらオジサンを見る。
「外に、出てみようかな。」
この日。
あたしは、あたしの中ではとても大きく過酷な挑戦を決めた。