禁断のピアノ・レッスン
「何よ」
若干不機嫌さをあらわにしつつ、ため息をつきながら聞いた私に翔は言った。
「俺の弟いるじゃん、慶。あいつさ、高校入ってバンド始めたらしいのよ」
「慶くんが?」
意外だった。
翔とは全然違う礼儀正しい男の子で、くりくりとした瞳が印象的だったっけ。
そう言えば最近会ってないな。
「そう。で、キーボード担当になったんだけど基礎が無いしさ」
慶くんの為なら別に断る理由はない。
「それならいいよ」
そう返事をすると、翔は慶くんにメールを打った。
幼かった慶くんがもう携帯を持つ年頃になった事に驚いてしまう。