かすみさんとさようなら。
「てか予備校帰りだったよね?」

一人のまつげが、彼方の鞄を指差して言った。
名前…思い出せないな。

「そうそう。
もうすぐ受験だから最後の追い込み」

彼方、話しかけられてうれしそうだな。
俺はポテトのまつげを見た。

相変わらずポテトをつまんではいるが、何故か俺を見る目が冷たい気がした。


「何?」

こんな空気耐えられない。
俺は軽く聞いてみた。

「ううん。
なんか、今日会えて良かったと思って」

そう言って、ポテトのまつげが笑う。


ーーっ!!

まずい、まずすぎる。


あの笑顔、思い出した。


「彼方、帰るぞ」

隣に座っている彼方の腕を掴んで立ち上がった。


「は?いきなり何?」

彼方は不思議そうに俺を見る。


まずい。まずい。

「いいから」

俺はそのまま伝票をもってレジに向かう。


そんな俺の姿を見て、2人のまつげが無言で笑う。


「うちらの姫、モテるんだよね」

「羨ましいくらいモテるんだよね」


なのに、告られても全部振るんだよね。

理由聞いたらさ、彼氏がいるとか言うの。

誰か聞いても教えてくれないんだけど、その振る時のあの子、彼氏思い出して嬉しそうに笑うのよ。


ドアを出るとき、2人が話している内容をなるべく耳に入れずに俺は外に出た。

彼方が名残惜しそうにファミレスの窓を見る。


俺が窓を横目で見たら、2人のまつげが手を振っていた。
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