弱虫うさぎの涙雨


「どうしたのよ?」


私は下を向く。


「下向くな、俺の目を見ろ」


身長180cmの健兎と、160cmの私。


健兎の顔を見上げるなんてごめんだ。


怖いし……。


「結構よ。それに、何の必要性があるのかしら」
「怖いんだろ?」
「何をいっているのかわからないわ」
「さっきから、そんなことばっかりだな」


健兎の手に力が入る。


「こんな意味のないことをしている時間があるなら、早く目的の場所へ行きましょう」
「じゃあ、そのままで言い、とりあえず、聞いとけよ」


健兎はそう言って一拍。


「もっと俺を頼れよ。いらない心配はするな、気にすんな。無理すんな、弱っちぃ癖に強がんな。今更だ、ばーか」


そう言って私の肩から手を離すと、くるりと向き直り駅の方へ向かって歩きだした。


私もそれに続いて歩き出したが、視界がぼやけてきた。


「ばーか、ばーか……健兎のくせに、かっこいいことばっか、いってんじゃないわよ」


ひっしに、涙をこらえながら健兎の背中にしがみついて歩いた。


人通りが少ないから出来ることだった。

< 10 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop