弱虫うさぎの涙雨
「どうしたのよ?」
私は下を向く。
「下向くな、俺の目を見ろ」
身長180cmの健兎と、160cmの私。
健兎の顔を見上げるなんてごめんだ。
怖いし……。
「結構よ。それに、何の必要性があるのかしら」
「怖いんだろ?」
「何をいっているのかわからないわ」
「さっきから、そんなことばっかりだな」
健兎の手に力が入る。
「こんな意味のないことをしている時間があるなら、早く目的の場所へ行きましょう」
「じゃあ、そのままで言い、とりあえず、聞いとけよ」
健兎はそう言って一拍。
「もっと俺を頼れよ。いらない心配はするな、気にすんな。無理すんな、弱っちぃ癖に強がんな。今更だ、ばーか」
そう言って私の肩から手を離すと、くるりと向き直り駅の方へ向かって歩きだした。
私もそれに続いて歩き出したが、視界がぼやけてきた。
「ばーか、ばーか……健兎のくせに、かっこいいことばっか、いってんじゃないわよ」
ひっしに、涙をこらえながら健兎の背中にしがみついて歩いた。
人通りが少ないから出来ることだった。