弱虫うさぎの涙雨
私がそのシンガーソングライターのCDを手にとって見ていると健兎が声をかけてきた。
「そのシンガーソングライター好きだよなぁ」
「うん。歌詞も、オケも、メロディーも…全部素敵なんだよっ!!」
私はテンションが上がってそう熱弁した。
「あっ……」
1テンポ遅れて、素の…私の嫌いな話し方が出てしまったことに気づいた。
口元を手でぱっと塞ぐが、もう手遅れだ。
これが、はじめてって訳じゃないけど…恥ずかしい……。
「どうした?」
私のその一連の動作を見て、健兎が不思議そうな顔をしている。
「……演劇は必要ないわ。言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい」
私は健兎の目を見てそう言った。
こいつの完璧すぎる演劇を見抜ける人はそんなにいないだろう。
「んー? なんで、素で喋んないのかなと」
「好きじゃないもの」
「ふーん」
なんだか、よくわからない会話をしてしまった気がする。