弱虫うさぎの涙雨
それから、気を取り直してCDの話に戻した。
「で、さっきの続きなのだけど、とにかく全部すてきなの。声も綺麗なの」
「へぇー。俺も聞いてみよっかな」
このシンガーソングライターの男声は本当に綺麗だと思う。
容姿も整っている。
「じゃ、俺そのCD買うわ」
「え?!」
私がその言葉に驚いたのは、決してこいつがCDを買うと言ったからではない。
私がまだもってないCDをこいつが買うと言ったからだ。
「俺が聴いたらお前にやるよ」
「いいの?」
「おう」
「……ありがとう」
私の手からCDを取り、健兎はレジへ向かった。
やった、嬉しい!
欲しいのに、なかなか買えなくて心の中で泣いていたのだ。
飛んで喜びそうになる。
「行くぞー?」
CDを買い終わった健兎に呼ばれた。
私はその喜びをそっと内にしまって、健兎の元へ向かった。