弱虫うさぎの涙雨
すると、狙っていたクマのぬいぐるみにアームが上手く絡み、大きなぬいぐるみを持ち上げていた。
「もう少し!」
私はつい、そんな事を口にしてしまった。
ハラハラしながら、健兎とガラスの向こうのぬいぐるみを交互に見る。
少しづつ、出口へと近づいてきて、次の瞬間にそれは下に落ちていた。
「やった、取れたっ! ありがとう、健兎のお陰だね」
ついつい素の自分で喜んでしまう。
健兎が落としてくれたぬいぐるみを取り出して、ぎゅーっと抱きしめた。
そのぬいぐるみは思っていたより大きくて抱き心地も触り心地も完璧。
「落とせて良かったぜ」
「もの凄い金額つぎ込んだけどね」
「ま、落とせたし結果オーライだろ」
健兎は微笑み、足元に置いてあった自分の荷物と私の荷物を持って少し歩くと、振り返った。
「帰ろっか」
「うん」
私はクマのぬいぐるみを抱きしめたまま、健兎と一緒に家に帰った。