弱虫うさぎの涙雨
とりあえず、無視して自分の席につく。
教室内はこいつが居るから結構安全だったりする。
「さーきー? シカトかよぉ」
こいつ…春雨健兎は私の机に手を突いて悲しそうな表情をして言った。
「また、演劇の練習?」
「ちげぇーよ、本心」
口を尖らす健兎に「あ、そう」とだけ返す。
「なんだよ、せっかくの久しぶりの再会が台無しだろ?」
「昨日会ったわ」
「あれ、そうだっけ?」
こいつとは高校に入ってから知り合ったわけだけど、実は家がお隣さんだったという、なんともいえない関係。
中学3年のころに引っ越してきたらしく、会ったことがなかった。
というか、私が自宅警備員(ひきこもり)をしてたからだけど……。
「そういえばさ、今日暇か?」
「突然ね、暇だけど」
「じゃあ、学校終わったらついこないだできたばっかの駅前のスイパラ行こーぜ!!」
健兎は超が付くほどの甘党だ。
茶色に染めた少し眺めの前髪から覗く瞳は眼鏡越しだというのに、ものすごく輝いているように見えた。
「まぁ、いいわよ。甘党健兎に付き合ってあげる。でも、その代わり……」
「奢ってくれ、だろ? 任せなさーい、この優しい、優しい健兎様が奢って差し上げましょう」
そう言って跪く健兎をみて、相変わらず楽しそうだなと思った。