弱虫うさぎの涙雨


「そういえば、あんた眼鏡変えたわね」
「突然だな、変えたけど。いいだろ、このオレンジ色!」
「そうね、あんたぽい」


健兎は自慢気に眼鏡を見せる。


「お前は眼鏡しねぇーの?」
「私はコンタクト派なの」
「似合いそうなのに、勿体ねぇー」


「……似合わないわ、眼鏡なんて」


私は小さな声でそういった。


健兎にはうるさい教室の中では声が届かなかったらしく「え、なんて?」と聞き返されたが答えなかった。


____キーンコンカーンコーン


始業式五分前を告げる予鈴がなる。


「体育館行くかー」
「そうね」


そう言っていると、健兎のもとに一人の男子生徒が駆け寄ってきた。


「一緒に行こーぜ!」
「いいよ、俺兎木さんと行くから」
「えー、詰まんねっ」


男子生徒はブツブツ何か行った後、別の男子生徒のもとに走っていった。


「とんだ猫かぶりやろうね」
「今に始まった事じゃないだろ! 行こーぜっ」
「良かったの?」
「何がー?」


今日改めて健兎の鈍感さを思い知った。


もしかしたら、そういう風に見えるように振る舞っているだけかもしれないけど……。

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