裏TABOO ~矢吹センセの場合~
立ち上がって手元を覗き込むオレを気にすることなく、「あと1問です」という声が聞こえる。
「採点おまけしてやろうか?追試の追試はさすがにないぞ」
ふと、ペンの音が止まった。
そして立ち上がった里見が、「出来ました」とテスト用紙を渡してくる。
一瞬だけ表に出そうになった感情を隠し、受け取って早速チェックし始めるオレを見透かしたように、
「それ3年の問題ですよね。でもおまけは結構です。それに取引なんてしなくても誰にも言いませんから」
それだけ言うと、今度こそ動揺を隠せないでいるオレに「失礼します」と会釈をして出て行った。
強がりでもはったりでもなく、その答案におまけは必要なかった。
侮れねえな、みつあみ眼鏡女子。
してやられたくせになんだか可笑しくて、シュレッダーにかけながら短く笑った。