裏TABOO ~矢吹センセの場合~
カメラの前
「で、何してんの?」
おそらく困った時にやる癖なんだろう、胸の辺りにあるみつあみの先を弄ぶ深爪気味の指を眺めながら問い掛けた。
前回の裏取引をスッパリと跳ねのけその優秀さをオレに見せつけた里見京子は、ここが学校だろうがマンションの狭い廊下だろうが同じ。
相変わらず、口を開くのに時間が掛かる眼鏡女子だ。
少し経ってからようやく、「先生こそ」と小さな声が耳に届いた。
「聞こえないんだけど」
「…矢吹先生こそ何してるんですか?」
今度はハッキリと、反抗的な視線付きで。
最初からその声で言えよと呆れながら、そもそもオレは何してるんだ?と思い返してみる。