裏TABOO ~矢吹センセの場合~
甘い香りが消えた途端、スイッチを押したように理性と本能が入れ替わる。
現実に戻った頭がこの後やらなければならないことを考え始め、微かに残っていた温もりや唇の残像を追い出そうとする。
小テストの採点、プリント作成、研修発表に向けての準備…
次から次へと浮かぶ現実に、溜め息しか出てこない。
寄り掛かっていた机から体を起こし、とりあえず目の前の厄介ごとから片付けることにした。
「もういいぞ」
奥の書庫へ続くドアに向かっていきなり声を掛けると、隙間から覗いていた目がさっと隠れる。
遅いっつーの。
その邪魔な視線に気付いたのは、抱き寄せてから数秒後。
結衣を不安にさせたくなかったのもあるけど、今さら止めても意味ないと続けた自分は完全に理性を飛ばしていた。