それでも僕は君に恋をする
そのあと、黄金色の照明がステージを照らした。

そこにはピアノがあり、鍵盤の前には黒髪の少女が座っていた。

「あの子、シンガーソングライターを目指してるそうなんだけど、歌がうまいのよ。よかったら、聞いてあげて♪」

ママは、俺の耳元で囁いた。

俺はママの方を向かず、ただステージを見つめた。

鍵盤のうえに、指がそっと置かれる。
あまりの細さに、少し驚いた。

そして、次の瞬間


「涙拭く頃 君はもう見えない


ありがとう 贈る言葉はただ一つ


いくつもの季節を超え


ともに励まし合い


ともに支え合った


君はもういないけど、大丈夫


道は尋ねない


君との日々を抱き締めて


また歩き出す」




か細い体から想像出来ない、力強い歌声と、彼女が織り成した言葉の数々。



俺は、この瞬間一気に身体中が熱くなった。



これが、後に日本を代表するシンガーソングライター桜井遥香との出逢いだった。
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop