【短編】 あじさいが咲く頃に
結局、放課後には雨は本降りで
亮は立川ちゃんと仲良く傘をさして帰って行った。
それを見送って
久し振りに横に誰もいない寂しさを感じた。
いつもはここに女の子がいるけど
今日は誰もいない。
「なーにやってんだか」
独り言は雨の音に消されて
誰の耳にも届かなかった。
そのことが引き金となった。
普段は思い出さないようにしていた感情が
今日になって胸を押しつぶす。
苦しい、悲しい、痛い。
ダメだ…このままじゃ…。
負けそうになる気持ちを抑えて
家路を急いだ。
真っ黒の空から降る滴は
容赦なく俺を濡らす。
傘、意味ねぇじゃん…。