【短編】 あじさいが咲く頃に
「でも他にも、ひたむきな愛情や
家族の結びつきって言われているんですよ」
その言葉にドクッと心臓が動いた気がした。
身体中の血液がものすごい速さで脈打つ。
その花言葉は、まるで――。
「はい、少しだけど持って帰って
育ててあげて下さい」
玄関先の摘んだ紫陽花で作った
色とりどりの花束を彼女から受け取る。
小さな花がいくつもあって
ようやく大輪となる、それは。
それは、まるで――。
「君、名前は?」
「松浦みすず、です」
にこっと笑う彼女は、紫陽花にはない色の
黄色の傘がよく似合っていた。