* another sky *
「玲って選手だったの?」
目を丸くして驚きながら、麻友理が、私に抱きついてきた。
「すっごい、格好良かったんだけど。」
「高校までだよ。」
「そ。国体も出てるんだよな?」
「ええーっ。
私、玲のことで知らないこと、あったんだ…。」
面食らったような表情で、麻友理が感嘆の声を上げる。
「明日は絶対、負けないからな!!」
「まーじ、無理だって。
俺も何回、泣いたか。
だって、玲、スコーンって跳ぶんだぜ…。」
航太は佐藤君の肩を叩きながら、慰めていた。
「そうだよ、跳ぶのはなしで勝負しようよ。」
「お前、明日も麻友理ちゃんと滑るんじゃなかったのかよ。」
「あ、―――。」
紺ちゃんの冷静な突っ込みに、みんなで笑いあって。
この日はもう、旅館へ戻ることにした。
「ぎゃー。絶対、明日、筋肉痛だ!!」
「来るね、来るね…。」
温泉に浸かりながら、ふくらはぎをマッサージして。
久し振りのボードに、じわじわと疲労が押し寄せてくる。
初めての雪山を体験した麻友理。
「私、もう、駄目…。」
お風呂の縁に顔を預けたまま、ぐったりとしていた。
「もう食事の用意、出来てるんじゃない?」
「食べながら寝れそうなんだけど…。」
「男子は飲み会するってよ。」
「わー。元気だねぇ。」