* another sky *
「帰りの車の中でもね、…。
麻友理、移動してきたでしょ。
ミラー越しにね、見えちゃったの…。
麻友理が……、
渡瀬さんにそっと…、もたれていく…、ところ。」
「えっ…。」
「寝ちゃってるのなら、まだわかるよ…?
そっと、なの。
その、空気感が…何か嫌で、―――。
だから…、
PAでトイレに連れてって、
麻友理に…、言ったの。」
「あ、―――。」
そうだ。
あの時、梨花は私にではなく、麻友理についてきてって、言ったんだ。
隣にいる私じゃなくて、わざわざ眠っていた麻友理を起こして…。
「麻友理、何、してるの?
玲の彼氏だよって。
私、結構強い調子で問い詰めちゃって…。
麻友理…、言い訳してたけど…。
誤解されるようなこと、しちゃ駄目じゃんって、言ったら…。
泣き出しちゃって…。」
そういえば、――――。
そういえば、車に戻ってきた麻友理、なんだか元気がないように見えたっけ。
私、何にも、気付かなかった…。
あの時からすでに……。
始まっていたってこと?
え、―――。
ちょっと、待って……。
じゃあ、あの時。
航太は眠ってなかったってこと…?
わかってて、麻友理をもたれさせていたってこと…?