* another sky *
KOHTA
「最近、――――。
玲ちゃんの話って、聞いてるか?」
――――――!!
「え? 玲??」
意外な場所で、意外な人物から玲の名前を聞いた。
まさか、佐藤の口から玲の名前を聞くとは…。
同業者の佐藤とは、仕事の関係で一緒になることが多い。
今回は違う部署での仕事だったらしいが、社内に出入りしていた佐藤に、呼び止められたんだ。
「ちょっと来いよ。」
そう言って連れて来られたのが、ここ。
「人目があんまりないとこが、いいんだけどな。」
何で俺よりお前の方が、詳しいんだよって、苦笑する。
そこは俺の会社にある、喫煙ルームだったから。
あれから2年。
玲のことを聞いたのは、本当に久し振りだ。
みんな遠慮して、名前、出さずにいてくれたから、な。
忘れたことなんて…、一度もない。
玲は未だに俺の中で…、笑ってるんだ。
そんなこと、もう絶対、言えないけど、ね。
ちゃんと別れの言葉を交わしたわけじゃない。
玲は、それすら許してくれなかったからだ。
何度も電話をかけたが、留守電に変わる。
メッセージを残しても、返事が返ってくることはなかった。
少し、距離を置いた方が、いいのかな。
なんて、悠長に構えてたんだよ…。
お互い、時間が必要だって。
俺たちが、離れられるはずが、ないって、高を括っていたんだ。