* another sky *
玲の笑顔が、未だにふと過ることがある。
俺の腕の中で、安心しきった子供のように眠っていた玲。
この小さな愛しい温もりを、俺自身の手で壊してしまったことが、悔やんでも悔やんでも…悔やみきれなくて。
そして今、―――――。
俺は麻友理と付き合っている。
『私たちの幸せは、玲を無視しては語れないわね。』
麻友理が最近、ふと口にした言葉だ。
何故って、それは全て、俺のせいだ。
俺と一緒にいることを選んだ麻友理は、友達を失った。
親友だった玲も、大学時代の友人たちも。
『私たちが幸せになれば…、いつかわかってもらえるわ。
だから、私は気にしない。
航太が、そばにいてくれる方が、嬉しいもの。』
人を不幸にしてまで手に入れたものは、一体何だったんだろう。
俺たちは一緒にいるのに、玲は一人だ。
俺は……。
玲を、一人にさせてしまったんだ……。
勿論、直ぐに麻友理に行ったわけじゃない。
ただ、麻友理はこの二年間、ずっと俺のそばにいてくれた。
何も言わず。
何も求めず。
時間が過ぎ、俺の気持ちが落ち着くまで、何も言わずにそばにいてくれたんだ。
愛してるのかと聞かれたら、そうだな、と答えるだろう。
だけど、玲の時とは…違うんだ。
「航太?」
不自然に、瞳が揺れる。
もう、二年も経つというのに……。