* another sky *
玲の話を聞いて、納得したんだ。
いつも良い子でいようと、頑なに思ってきたんだろう。
そう、頑張りすぎるんだ。
ピンと張った弓弦のように、周りの視線を気にして。
決して自惚れることは無かったし、他人に自分の努力を見せることもなかった。
ただ、にこにこと笑って。
中心の輪の中から、一歩離れた場所に、いた。
俺の前では、頑張らなくてもいいんだ。
弱い玲も、出してくれていいんだよ、って。
安心してくれるように、いつも気持ちを口に出して言うようにして。
「愛してる。」
そう囁くと、恥ずかしそうに、嬉しそうに、笑う。
俺だけに見せる、甘い、表情も…。
未開発の玲の身体も、いつのまにか夢中になったのは、俺の方。
「航太。」
真っ直ぐに俺を見つめる、そんな玲が愛しくて仕方なかった。
いつも笑顔でいられるように、俺が守ってあげたかったんだ。
俺が、玲の基盤になっていると、自負していた。
だけど、それはもう、俺の独りよがりで。
気付いた時には、遅かった。
守ってあげてたいなんて思ってたのは、俺のエゴ。
俺の方が、玲に守られていたんだと。
その時には既に、玲は俺の前から消えていた。
誰にも連絡先を教えずに、ひとり消えてしまった。