* another sky *
「元気だったの?」
「……っ。」
どう、答えたらいいのか、わからない。
こんなもん、なの?
私が苦しんでいた時間は、何だったの?
何でそんな笑顔で、私を見ていられるの……?
「あなたたち…、知り合いだったの?」
千尋さんの声が、した。
何も答えられない私に代わって、
「学生時代の友人です。」
と、笑みを浮かべて麻友理は答える。
「ほんと、久し振りだね。」
「…うん。」
首を傾げながら、幸せそうな笑顔を向けてくる麻友理に、正直、混乱していて。
とにかくもう、この場所から離れたい。
ただそれだけの思いで、私は千尋さんに振り返る。
「じゃあ、――――。
千尋さん、失礼します。
…麻友理も、じゃあね。」
それだけ言って、私は桜木さんのいる奥の席まで歩いて行った。
どうにか、声を、出せた。
麻友理って、……言えた…。
相当、顔面蒼白だったらしい。
桜木さんはすぐに席を立ち、
「出よう。」
と、私の腕を引っ張っていく。
千尋さんと麻友理の視線を感じながら、私たちは店を後にした。
2年も、経っているのに……。
私はまだ、囚われている。
今の私に…昔の事を振り返っている余裕なんて、ない。
もう、嫌だ…。
早く忘れてしまいたいのに……。