* another sky *

「今さら、何で?」


「話したいこと、あるのっ。」


――――――!!


「私はないよ。」


はっきりと目を見て言い放つ。


「私には、あるのっ。」


「嫌だ。教えたくない。」


無下に断る私に、麻友理は息を飲んだ。


これ以上、関わりたくないのに、どうして…?

もう、あなたたちのことで悩むのは、嫌なの。


「吉野、行くよ。」


桜木さんの声がした。


「…じゃあ。もう行かなきゃ。」


「ねえ、玲。お願いよっ。」


「……っ。」


私は桜木さんの方へ体を向ける。


「ごめんね、忙しいの…。」


「玲ってば!!!
お願いだからっ、連絡先…。」


………なんで…。


必死に食らいついてくる麻友理に、後退りする。

こんな引き下がらない麻友理、初めてだ…。


どうしよう……。


麻友理の表情から、絶対に後には引かない空気が漂っている。


会社にかけてこられたら……。

内定をもらった時点で、知られているんだ。

調べられたら簡単にわかってしまう。

会社には…連絡してきて欲しくない。

っていうか、仕事にまで左右されたくないっ。


あぁ…、もうっ!!


「わかった…。」


鞄からペンケースを取り出し、付箋に携帯の番号を書く。

着信…、拒否すればいいんだ。

断腸の思いで、それを渡す。


「はい。」


不安そうだった表情に、ぱあっと明るい色が戻って。


「連絡、するね。」


麻友理はあの綺麗な顔で、私に微笑んだ。
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