* another sky *

連絡なんて、いらないのに。


麻友理は今さら何を話したいんだろう。


「じゃあ、玲、またね。
電話するから。」


走ってお店に戻っていく麻友理の背中を、私は茫然として見ていた。


私、今…、何をしたんだろう…。

心が、悲鳴を上げている。

指先から、血の気が引いていくのがわかる。

冷や汗が出て、呼吸もだんだん荒くなる。


「大丈夫なの?」


「……っ。」


やばい、――――。

このままだと、過呼吸の発作が……。


「吉野?」


「すっ、すみ…ま、せん…。

ちょっと、……。」


落ち着け、―――――。


落ち着け、私。

大丈夫だから。

かかってきたって、喋ることなんかないんだし。

直ぐに着信拒否しちゃえば、大丈夫だから。

大丈夫。

大丈夫……。


胸に手を当てて、何度か大きく深呼吸を繰り返す。

しばらくして、やっと頭の中に酸素が流れていくような感触が戻ってきて、私は項垂れたまま目を閉じた。


ダメージ、受けすぎ…。

桜木さんも、一緒なのに……。


「すみません、大丈夫です。」


ぐっと唇を噛みしめて、頭を上げた私に桜木さんは困ったような笑顔を見せた。


「んなわけ、ないでしょ。」


「えっ。」


「顔、真っ青。
ほら、行くぞ、――――。」


「……っ。」


桜木さんは近くに会ったカラオケ店に入って行く。


かっ、カラオケ??
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