* another sky *

感情に任せて泣いてしまうと、楽になった。

私は、泣きたかったのかもしれない。

ぎゅっと唇を固く結んで。

眉間に皺を寄せて。

緩んでしまうことを恐れて、毎日気を張って生きてきたから。


ふにゃふにゃになってしまった私を、桜木さんは笑う。


「吉野も…、やっぱり女の子だったんだね。」


「…どういう意味ですか。」


「いつも戦闘態勢だったからさ。」


「……っ。」


今日はもう、何を言われても駄目だ。

私はまた、泣いた。

両手で顔を覆って、声を上げて泣いた。


「箍が外れてる。」


桜木さんの、可笑しそうに笑う顔を見ながらも、涙が止まらない。

あの日以来、一度も流さなかった涙は溢れるばかりで。

私は、自分の感情に素直になるしかなかった。



残っていた仕事をさっさと片付けて、会社近くにある駅ビルの中の居酒屋に向う。

後の仕事は、全部諏訪さんお願いした。

ランチ1回、飲み代1回で手を打ってもらったのだ。


「っったく、―――――。
俺のこと、何やと思ってんねんっ。」


「先輩、ありがとうございます。
心置きなく、飲めます。
残業代、思ったより安くついたー。」


「あほか。
ランチは『鈴花』のすき焼き御前じゃっ。」


「何でやねん。」


「もうっ……。
あんた達、またやってんの?」
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