* another sky *
「吉野、行くよ。」
玲と一緒にいた女の人が、後ろから声をかける。
「…じゃあ。もう行かなきゃ。」
ホッと、救われたような顔をして、玲は私に視線を向けた。
「ねえ、玲。お願いよっ。」
「ごめんね、忙しいの…。」
頑なまでに拒否されて。
それでも必死に食らいつく私って…、いったい、何?
「玲ってば!!!
お願いだからっ、連絡先…。」
私、プライドとか、そういうの、ないの…?
情けなくって、泣きそうになる自分を奮い立たせて。
「お願いだから…。」
小さく呟いた私に、玲は困ったように眉をひそめた。
ねえ、玲…。
私が今まであなたにこんなにお願いしたこと…、あった?
私は未だにあなたの影に怯えているのよ。
わかる……?
やっと、やっと、幸せになれそうなの。
お願いよ…。
連絡先くらい、教えてよ。
「わかった…。」
玲はカバンの中からペンケースを取り出すと、急いで付箋に自分の携帯の番号を記す。
そしてそれを苦しそうに私に渡した。
「連絡するね。」
私は満面の笑みで玲を見つめた。
玲の表情からは、後悔の思いがありありと見え隠れして。
もう、視線すら、合わせてくれないんだね…。