* another sky *
航太がいないと駄目ならば、私と勝負すれば良かったのよ。
どっちが航太に相応しいか、航太に選んでもらったら良かったのよ。
どう足掻いたって、航太を幸せにしてあげられるのは、私、でしょう?
思った通り。
一人で生きていける、強さが玲にはある。
あの子は、振り返ったりなんか、しない。
そう、わかってるのに。
自分で自分が、抑えられなかった。
千尋さんにばれてしまったら…?
そう思うと、不安で不安で仕方がなくて。
私だって…もう、――――。
怯えて暮らすのは…、嫌なの。
「はい。吉野です。」
凛とした声が、耳に響く。
ああ。
懐かしい、玲の声。
玲の声は、可愛らしいイメージと異なって、少しハスキー。
だからこそ、透明感が増す、懐かしい玲の声。
「玲?」
「あ、うん。」
「今日、久し振りに会ったね。」
私は、ゆっくりと、話す。
「そうだね。」
玲の声からは、感情が読み取れない。
それなのに。
私の心臓は、跳び跳ねるように脈打っている。
緊張を、出しちゃ、駄目。
「今、いい?」
「ごめん。今、外なんだ。」
「あ、そうなんだ。
じゃ、またかけ直すね。」
『またかけ直すね。』
そのひと言に、玲は絶対に反応するはず。
また今度、なんて…、私だって嫌だもの。
かけ直す勇気なんて、ないもの。