* another sky *

「あ、何?
…少しだけなら。」


ほらね。

これで終わりにしたいと、焦ってる。


「あ、いいの?」


「なに?」


玲の声は冷たくて、よそよそしくて…。

押しつぶされそうな気持ちを奮い立たせて、小さく息を吐いた。


「あのね、航太がね、カナダに転勤になったの。」


私は幸せなんだってことを誇示したくて、わざと媚を含んだような甘ったるい声を、心がけた。


「うん。」


「あ、知ってたの?」


「今日、千尋さんから、聞いた。」


「そっかぁ。千尋さんたら、余計なこと…。」


「……っ!!」


「それでね、私、付いて行くことにしたの。」


「…うん。」


「今日ね、その買い物をしようと千尋さんと一緒だったんだけど…。

千尋さん、知らないの。 

っていうか、渡瀬家はみんな私と玲が友達だったってこと、知らないの。」


友達だった……。


自分の放った言葉に、衝撃を受けた。


「……っ。」


どうしてこんなにも、胸が張り裂けそうに痛いんだろう…。

携帯を持つ手が震えてきて、息が苦しくなる…。


「だからね、黙っててくれないかな?」


「えっ?」


「私と玲が、仲が良かったってこと。

知られたらね、何かやっぱり印象良くないよね。

友達同士で彼氏を奪い合ったって思われたら、嫌じゃない?」



玲、―――――。


ごめん……。
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